フィリピンの公教育は、慢性的な 「教室不足、教師不足、教科書不足」 の問題を抱えています。
公立学校の多くは、何千人という生徒を収容する教室や教師が間に合わないため、午前組、午後組
(時には夜間組)に分けて授業を実施し、1クラスの人数も50人以上だったりします。
また、校舎内では収容できないために屋外のスペースでも授業が行われているのを見かけます。
教師不足は、給与の低さが一因で、生活のため教師が海外に出稼ぎに出るケースも多く、
教科書不足も含めて、これらの「不足問題」の主因は、「国の教育予算の不足」にあります。
小学校の段階からドロップアウト(中途退学)する子どもが多いことも問題です。
家が貧しく家計を助けるために働かなければならなかったり、学習意欲を失う子どもたちが増えているといいます。 小学校に入学しても卒業できるのは、7割程度だという調査もあります。
小規模クラスで、質の高い教育を受けられる 「私立学校」 もありますが、
授業料が大変高額なため、フィリピンの一般的な家庭では、そのような選択が出来ません。
公立学校の中で、出来る限りの知識を身につけることが求められます。
学校教育が無償に近いとはいえ、授業料以外の様々な出費が家計の負担になっています。
・ 交通費 (バスやジープニー1区間8ペソ)
・ 文房具 (ノート=各教科毎で10冊は必要、バッグ、ペン、クリアファイル、ホルダー、定規)
・ 制服 (お古をもらえない場合)
・ 給食費
(公立学校では、一般的に5ペソのスープを買うよう指導しており、同時にパンやクッキーも食べるので毎日10-20ペソはかかります。)
学校生活で必要な、これらのものが全て自己負担になります。
また、全てが完備している日本の学校からは想像できませんが、新学期には清掃用具(ほうき、ちりとり、フロアワックス等)も持参しなければなりません。
「プロジェクト」と呼ばれる、課題を提出するにも、さまざまな経費がかかります。
【歴史の調べ学習】
例えば「歴史」で指定されたことを調べる為に、まず写真を買い、それを切って説明タグをつけてのりで貼って提出します。
また、学校にパソコンがなく、使う順番がすぐに来ない場合、町で1時間15ペソを払って使う必要があります。そして、それをプリントするのにも、白黒でも10ペソかかります。
【家庭科の実習】
裁縫をする場合は布や糸、料理や工作の授業には材料費の負担もあります。
このように様々なプロジェクトにはお金がかかるので、材料費を捻出できない生徒は提出できない場合があります。これは成績だけでなく、本人の意欲の低下にも繋がってしまいます。
当会の奨学金は、主に上記のような、教育にかかる自己負担分の経費のために使われています。